特別授業「韓国船はなぜ沈んだか」

たまには塾らしいことを書いたら?と友人の塾長に言われた。では、ということで、最近ポラリスでやった特別授業「韓国船はなぜ沈んだか」をブログにアップします。
たくさんの方々が亡くなったこの事故を授業の題材にするのは不謹慎、という意見もあるだろうけど、私は逆だと思う。こうした事故の原因を理解する、ということは、子供たちに万一の危機に際しての回避の可能性を与えることになる。また、深い科学的理解を通じて、こうした悲惨な事故を起こさない社会を作る力強い社会人にきっとなってくれる、と思うからだ。そしてそれらのことこそが、亡くなった方々への最大の供養だと僕は信じている。
今回の事故は船長が我先に逃げ出したことや、船員たちの不適切なアナウンス等、人災と言われてもしかたながない。しかし、今回は純粋に科学的側面にスポットライトを当てて実験授業をしていきます。
さて、船にとって大事なことはなんだと思う?それは波や風などで傾いてもすぐに元の状態に戻れることだ。この元に戻ろうとする力を「復元力(ふくげんりょく)」というよ。傾いて、万一船に水が入ってしまうと、浮力が無くなってすぐに沈没ということになりかねないからね。では、ここでおきあがりこぼしを使った実験を見てみよう。これは僕がガムテープの芯とか、磁石を使って作ったものだ

物体の重さの中心を「重心(じゅうしん)」というけど、実験を見ての通り、「重心が低いほど、復元力が強くおきあがりこぼしは安定し、重心が高いほど復元力が低下し、おきあがりこぼしは不安定になる。」ことわかるだろう。そして、このおきあがりこぼしは海上に浮いている船とまったく原理は同じなんだ。つまり船の安定にも「低い重心」が求められるんだ。

まず船の構造を見てみよう。おおざっぱだけど、こんな感じになっているよ。最下層にはバラスト水という水が大量に入っている。この水がおきあがりこぼしの「重り」と同じ役目をはたしている。その上が荷室で、積荷が入るところだ。

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では事故までどのような経緯をたどったか説明をして行こう。実はこの韓国船セウォル号、20年ほど前には日本で就航していた船だったんだ。それが、韓国に中古船として売られて改造された。この時、客室が増設されて、重心が50センチ以上上がってしまった事がわかっている。復元力は大幅に低下してしまったんだ。

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そして、事故の時、このセウォル号は積荷を規定の3.6倍も積んでいた。これは明らかに違法なのだけど、いかんせん、このままでは積荷の重さだけで沈んでしまうので彼らは何をしたと思う?なんとバラスト水をほとんど抜いてしまったんだ。積荷の重さの変化をバラスト水で調節することはよくあることだ。だが、ほとんど抜いてしまうとどうなるのか。もう、重心は思いっきりあがり、復元力がとんでもなく低下してしまうのはわかるだろう。

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そして、通常、燃料タンクは荷室の下、バラスト水の中にある。船は港を出て12時間たっており、燃料は相当に消費していたはずだ。するとますます船の重心は上がってしまい、復元力は極限まで低下していたと思う。事故直前には、船はうどうにもならないくらい不安定になっていったんだね。

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そして運命の時間がやってきた。2014年4月16日午前8時58分、セウォル号は右に急旋回した。進んでいる乗り物が急に曲がるとき、どういうことが起こるか・・・・実験で見てみましょう。 

おもちゃの列車に乗った「おきあがりこぼし」の旗が「遠心力」で列車が曲がる方向と反対方向に傾くことがわかるでしょう。これと同じことがセウォル号で起きたんだ。つまり船が急旋回したとき、船体が遠心力で反対側に傾いた。復元力が限界まで低下していたので、この傾きはかなり大きなものになったはずだ。その結果、積荷がいっきに傾いた荷室をすべり落ちていった。荷物一つ一つにも遠心力はかかっているからね。それこそ、積荷はぶっ飛ぶように、船の傾いた側に落ちていったと思う。生き残った乗客は、このとき「ドーン」という大きな音を聞いたというから、積荷がぶっ飛んで壁や床にぶち当たった音だったのかもしれない。もともと復元力がほとんどなくなっていた「セウォル号」にとって、このバランスの崩れは「とどめの一撃」だったに違いない。大型客船セウォル号はあっけなく沈没してしまったんだ。

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ちょっと話を聞けば、小学生でも理解できるような原因で、船は沈んで、多くの若い尊い命が失われてしまった。それが残念でならない。これを読んでくれている子供たちは、こうなった理由をしっかり理解し、大人になった時、二度とこのような不幸なできごとを繰り返さない社会を作っていってほしい。それが塾長の願いです。

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