友人の塾長が倒れた。
突然の知らせだった。ちょくちょく電話して塾の方針なんかを話していた友達の塾長が倒れた。脳出血だった。すぐに見舞いに行ったのだが、完全回復には時間がかかりそうだった。受験間近の生徒達も辛いだろうし、また、責任感が強かった塾長も病気とは言えかなり忸怩たる思いだろう。私なんかも、まったく他人事ではない。併設しているそろばん塾こそほかの先生方に頼んでいるが、一般の塾はほぼ私一人だ。だから絶対に病気にはなれない。塾をはじめて15年になるが、この間、風邪等にかかったのは、年末か、盆休みの授業の無いときだけだったりする。
とりあえず、彼の「片麻痺」を緩和するために「リハビリ装置」を作ることにした。段ボールに穴をあけて、と。
腕が入る程度の穴を4つあけて、と。手を切らないように、あけた穴の周りはガムテープで補強。
真ん中に、鏡を立てて出来上がり。
え?こんな簡単なものでどうやってリハビリ?実はこれ、神経科学研究の第一人者、ラマチャンドラン博士が発案したれっきとした「片麻痺」のリハビリグッズなのです。神経が切断されてしまった腕は、言って見ればまな板にのっている肉塊といっしょ。どんなに動かそうと思っても、念力でもない限り動かすことは難しい。人間の脳神経は、そういう時には切断されたところはあきらめて、新たに「う回路」の神経系を作り始める。しかし、これが難しい。脳の内部でもどちら方面に新たなネットワークを構築するかわからないからだ。これは、「とっかかり」がないから、と言えるだろう。勉強でも「とっかかり」がないと暗記が難しいのと似ていると言えば似ている。日本史を覚える時、まったく頭に何も入っていないまっさらな状態だと、とんでもなく時間がかかるが、いったん頭の中に大まかにでも歴史の流れが入ると、それがとっかかりになって、暗記する断片が結びつく。すると記憶の連鎖がはじまり、飛躍的に暗記効率が上がっていく。
人間が手を動かすときは、もちろん手を動かす「運動神経」が介在している。しかし、実はそれだけではない。目から入る視覚情報も、微々たるものではあるが手助けをしている。で、この装置、鏡に映った「動く手」を、片麻痺で動かなくなった「手」だと脳に勘違いさせることが出来る。その時、脳は錯角を起こし、動かない手に「動いていたころの記憶」を想起させるのだ。これが微々たるものなのだろうが、「とっかかり」になる。ひとたび「とっかかり」が出来れば、あとはしめたもの。それに徐々に肉付け(神経付け?)をして強く太いネットワークを形成していけばいいのである。(こんなにかんたんなこっちゃないだろうけどね。)とりあえず、僕の手を使った動画貼っておきます。こんな感じ。鏡に映っているのは、もちろん右手です。どう見ても左手に見えるでしょ?
で、しっかり梱包して送ったけど、上手くいくといいなぁ。